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ロンドンマラソンから英国のチャリティー文化を知る

「ロンドンマラソン」と言えば、スポーツにそれほど関心のない人でも聞いた覚えのあるマラソンレースではないでしょうか。今では4万人以上のランナーが参加する世界最大規模のスポーツイベントです。また一方で、ロンドンマラソンはチャリティーマラソンの先駆けとも言われています。多くのランナーがチャリティーランナーとして参加し、マラソンを楽しみながら慈善活動にも参加しているのです。なぜマラソンを楽しむことが慈善活動になるのか、不思議に感じたことはないでしょうか。英国文化に根付いているロンドンマラソンの「チャリティーの仕組み」をお伝えしたいと思います。

1.巨大スポーツイベントとしての魅力

まず初めに、ロンドンマラソンがどのようなイベントなのか、簡単に触れておくことにします。ロンドンマラソンは1981年に第1回大会が開催され、それ以来毎年4月に開催されています。メルボルンオリンピックの障害競走の金メダリストであるクリス・ブラッシャー氏が、ニューヨークシティマラソンを参考に創設した大会です。天文台で有名なグリニッジパークをスタート地点として、ゴール地点となるザ・マルを目指します。カティー・サーク、タワーブリッジ、ロンドン塔、バッキンガム宮殿など、観光地としても有名な市内各所を走り抜ける42.195kmのコースです。

エントリー種別は、一流ランナーが記録を競うチャンピオンシップエントリーや、当選が非常に困難と言われる一般抽選をはじめ、チャリティーエントリー、視覚障がい者エントリー、車椅子エントリーなど、他にも様々な種別が設定されています。2019年の第39回大会は、応募総数が約414,000名にものぼり、実際に参加することができたのは約43,000名。この数字だけを見ても、世界中のランナーから愛されているスポーツイベントだということがよくわかります。

2.ロンドンマラソンのチャリティーの仕組み

ロンドンマラソンの大きな特徴として注目したいのは、全参加者のうち4分の3以上を占めると言われている「チャリティーランナー」の存在です。ロンドンマラソンと同じく、世界6大メジャーマラソンの一つでもあるボストンマラソンと比較しても、チャリティーランナーの割合は突出していて、「世界最大級のチャリティーイベント」とも言われています。

チャリティーを目的としてマラソンに参加する、とは一体どういうことなのでしょうか。なぜ走ることが善意活動となるのか。チャリティーランナーとしてロンドンマラソンに参加すると、一体何が起こるのか。ここでは「チャリティーエントリー」と呼ばれる方法でロンドンマラソンに参加する時の流れを見てみたいと思います。

<チャリティーランナーの視点からチャリティーの仕組みを知る>

Step1:応援したい慈善団体を選ぶ

ロンドンマラソンには、約1500の慈善団体が登録されています。(英国における「慈善団体」とは、日本では「NPO」と呼ばれる団体と近い存在です。)各団体の活動内容は多種多様で、自然保護、障がい者サポート、児童虐待の防止、がん予防、メンタルヘルスなど、様々な領域に及びます。チャリティーランナーとしてロンドンマラソンに参加しようとする場合は、まず初めに、登録されている慈善団体の中から、活動内容に共感し、応援したいと思う団体を選びます。

(慈善団体リスト:ロンドンマラソン公式サイトより)
https://www.virginmoneylondonmarathon.com/charity/run-charity/listings/UK/index.html

Step2:選んだ団体が保有している「チャリティー枠」に申し込みをする

応援したい慈善団体が決まったら、その団体が保有しているチャリティー枠に申し込みをします。それはつまりどういう事かというと、その団体に所属するチャリティーランナーとして、ロンドンマラソンに参加する、ということを意味します。各団体には、ロンドンマラソンの運営母体である「バージンマネーロンドンマラソン」からチャリティー枠が割り当てられている(正確には慈善団体が購入している)ので、その枠の獲得を目指して申し込みをすることになります。

申し込みをしてチャリティー枠を獲得できたとしても、無料で参加できるわけではありません。チャリティーランナーとして参加するためには、その慈善団体への募金が必要になります。その金額は慈善団体によって異なりますが、概ね2000ポンド、日本円で25~30万円程が標準的のようです。この約30万円をどこから捻出するのか。例えば、子どもの貧困撲滅を目的として活動している団体を選んだとしたら、あなたはその団体のファンドレイザー(資金調達担当者)となり、子どもの貧困撲滅活動を持続させるため、あらゆる手段を駆使して30万円の募金を集めてくることを誓約する、ということになります。つまり、30万円の募金を集めてくる事と引き換えに、ロンドンマラソンにチャリティーランナーとして参加することができる、という仕組みです。ですので、参加申し込みの際には、チャリティーに参加する意気込みや、どのような取り組みによって目標金額を達成しようと考えているのか、といったことを具体的に記載する必要があり、その内容を審査されることになります。(誓約どおりに資金調達できない可能性もあるため、申し込み時点で保証金を支払う必要があるなど、団体によって対応は様々のようです)

Step3:ファンドレイジング(資金調達)活動を展開する

慈善団体のチャリティー枠に申し込みをした結果、ロンドンマラソンに参加することが決まったら、次は目標金額を達成するためにファンドレイジング(資金調達)活動を展開していくことになります。まず初めにやることは、ロンドンマラソン公式募金サイトに、自分専用の募金ページを作成します。これは、クラウドファンディングのプロジェクトページを立ち上げるようなイメージになります。例えば、難病と闘う子どもをサポートしている慈善団体のチャリティー枠を獲得したとすると、あなたは、職場や学校、家族、友人など、周囲の人たちに次のように話しをします。「ロンドンマラソンに出場することになったよ!難病と闘う子ども達の力になりたいから走るんだよ。だから、専用の募金ページを立ち上げたから是非応援してね!」と言って、自分専用の募金ページのURLを伝えることになるわけです。応援してくれる人たちは、そのURLからあなた専用の募金ページにアクセスしてクレジット決済で募金をし、そのお金は慈善団体へと流れていきます。チャリティーランナーは、マラソンの完走に向けて日々のトレーニングに励むのと合わせて、ファンドレイジング(資金調達)活動にも取り組むことになるのです。

(バージンマネーギビング ロンドンマラソン公式募金サイト
https://uk.virginmoneygiving.com/fundraiser-display/search?searchTerm=Wellchild&type=all&filters=true
(このページは、難病と闘う子どもたちをサポートしている「WellChild」という慈善団体に所属するチャリティーランナーのページです) 

3.時間をかけて進化してきた英国のチャリティー文化

日本において、「マラソン大会に出場するから募金してほしい」と言われたら、どのように感じるでしょうか。なぜ、趣味でマラソン大会に出場する人のために、自分がお金を出してあげなければいけないんだ??と疑問に感じてしまうかもしれません。上述のような仕組みを理解、或いは体験していないと、お金の流れをイメージすることは難しいと思いますし、そして何より、そのような文化になじみがなく、違和感を覚える思います。では、英国ではどのようにしてそのような文化を育んできたのでしょうか。そのヒントとなるのが、ロンドンマラソンのレースディレクターを務める、ヒュー・ブラッシャー氏の次の言葉です。

人々には、26.2マイル(42.195km)もの距離を走りきる理由が必要です。それは、愛する人、友人、または理念のために走るのです。チャリティーのために挑戦することは、英国、或いは英国のスポーツ文化ではごく普通のことになりました。しかし、それは突然そうなったわけではなく、英国文化の中で徐々に進化してきたものであり、1981年に始まったこのロンドンマラソンがそのきっかけとなったのです。

ロンドンマラソン レースディレクター ヒュー・ブラッシャー氏

4.コロナ禍に大会理念を体現する新たな取り組み

新型コロナウィルス感染症による影響が世界中のいたるところに及んでいる中、ロンドンマラソンもその例外ではありませんでした。2020年の第40回レースは、当初4月26日に開催される予定でしたが、コロナウィルスの影響により延期となり、10月4日に開催される予定です。しかし、それもどうなるかは不透明な状況となっています。

ここで、ロンドンマラソンが掲げる理念を紹介します。(一部抜粋)

・問題を抱えた世界を楽しんで、幸せと達成感を提供する
・人間は時に、一つになることができる

単なるスポーツイベントであれば、延期になった、中止になった、という話しでしかないところですが、ロンドンマラソンはそうではありませんでした。ロンドンマラソンの延期が発表されたことを受けて、「The 2.6 Challenge Save the UK’s charities(2.6チャレンジ)」という新しいキャンペーンが立ち上がったのです。これは、英国の慈善団体を救うためのキャンペーンで、ロンドンマラソンを主催しているヴァージンマネーギビングをはじめ、英国内の大型スポーツイベントの主催者たちが団結して立ち上げたキャンペーンです。(2020/6/10時点で約15億円もの寄付が集まっています。)ロンドンマラソンをはじめ、多くのチャリティーイベントがコロナウィルスの影響により中止となり、多くの慈善団体が活動を継続することが難しい状況に直面していましたが、英国民はそういった状況に背を向けなかったということではないでしょうか。先に紹介したロンドンマラソンの理念が英国で浸透し、生きていることが証明されたのだと思います。

(「The 2.6 Challenge」は、2.6または26の数字にちなんだ活動、或いはチャレンジを通して募金活動を行い、慈善団体に寄付をするというものです。ロンドンマラソン2020は、当初4月26日に開催される予定だったことにちなんで「2.6チャレンジ」という名称になったようです。参加するチャレンジャーの事を「ホームヒーロー」と呼ぶなど、楽しめる工夫がされている点も、ロンドンマラソンの理念と通じるものがあります。

(2.6チャレンジ 公式サイト)
https://www.twopointsixchallenge.co.uk/

5.6640万ポンド(約90億円)が1日のイベントで集まることの意味

2019年のロンドンマラソンでは、約6640万ポンド(約90億円)の寄付が集まりました。1日のイベントで集めた寄付金額としては世界記録を更新し続けており、1981年の第1回大会から募ってきた寄付金額の累計額は、10億ポンド(1350億円)を超えています。このお金には、「どこかの、誰かのために」という英国民の想いが乗っているのだと思いますが、40年に渡ってこれだけの金額の寄付が集まるということは、英国民にとってチャリティーというものが単発的、表面的なものではなく、文化として日常の中に根付いているからこそだと思います。

日本にも、世界6大メジャーマラソンの一つである「東京マラソン」があります。東京マラソンのチャリティーの仕組みは、ロンドンマラソンをベンチマークしていると聞いたことがあります。大会関係者やランナーだけではなく、たくさんの人が東京マラソンの果たすべき役割や価値について理解し、時間をかけてロンドンマラソンのような大会に進化させ、そして浸透させていくことができたら、世界に誇れる日本のチャリティー文化となるのではないでしょうか。


(ロンドンマラソン公式ホームページ)
https://www.virginmoneylondonmarathon.com/index.html

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